ベン経の泣き所

とあるベンチャー企業の経理の人が、経理的視点を入れたり入れなかったりしながら仕事や日常のことを書きます。

経理実務における立替経費精算と”ポイント”を考える

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Suicaをはじめとした交通系ICでもポイント

経理っぽい話を書いてみたいと思います。

キャッシュレス化推進よりもずっと前から存在する”ポイント”。

古くはヨドバシカメラのような家電量販店のポイント還元でしたが、
今や右を向いても左を向いてもポイント、ポイント、ポイント。

Tポイント、dポイント、Pontaポイント、本当にたくさんあります。

以前から飛行機に乗るとマイルが付与されていて、
「業務出張の多い人はマイルたまっていいなー」みたいな話はありましたが、
SuicaPASMOで電車に乗ることでポイントが付与される時代になりました。

 

この”ポイント”、会計的にどう扱うかは時代の流れに合わせて変わっています。

と言っても明確なルールはなく、引当金の考え方を準用するのが一般的で、
利用されると合理的に見積もったポイント分を引き当てておき、
実際に使われたら引当金を充当する・・・という流れが多いと思います。

これが、今後の新しい会計ルール、収益認識基準の適用により変わり、
「ポイント発行した分は売上計上してはダメです」
「ポイントが使われたときに売上計上しましょう」
ざっくりこんな感じになるので、ポイントをバンバン付与しているような
会社だと売上が先送りとなり、数字上のみの業績悪化が懸念されます。

・・・以上はポイントを「付与する側」の話ですが、
「付与される側」の話はあまり聞いたことがありません。

会計上のルールは無いですし、社内ルールすら無いところが大半で、
なんとなく経理が決めて・・・の運用が多いのではと想像します。

複数の事業会社での経験から、以下のルールでの運用が(比較的)
不平不満が出にくく、かつ問題も起こりにくいと考えています。


①受け取るポイントは無いものとする
100円のものを買ったら100円で処理する。
ポイントが付与されていても、無いものとして気にしない。

②ポイントによる支払いは精算対象外
①記載のとおり、ポイントは無いものとしているため、
支払いに充当したポイント分の経費精算は原則として認めない。
(立替経費精算においてポイント支払をしないよう周知)

③会社判断でポイントを支払に充当したときは雑収入として処理
立替経費精算からは少し話がずれますが、法人カード決済に対して
付与されたポイントの使い道として、支払への充当があげられます。

キャッシュレス還元によるマイナスも同様ですが、雑収入として
認識することが会計上も税務上も適切と考えます。

さらに脱線しますが、会社によってはポイントを物品に交換して
オフィス備品として活用したり、会社イベントの景品として
従業員に配ることもあるかと思います。

基本的に会社判断でよいかと思いますが、金額が大きくなると
ものによっては給与所得となる可能性を考えたり、簿外資産となる
リスクを考えたりする必要が出てきます。
そのため、個人的には物品交換には反対の考えを持っています。

 

・・・本題に戻ります。
上記のようなルールを選択しているのは、下記のような考え方からです。

<例>
・100万円と1万円の立替経費が発生した
・1%ポイント還元が行われる

ちょっと金額的に極端ですがわかりやすくするためにこちらの金額で。

仮に②を適用しない、ポイントによる支払いを認める場合、
従業員側から見るとこんなことができてしまいます。

(1)100万円のものを買う
(2)1%還元により1万円のポイントを得る
(3)1万円のポイントで1万円のものを買う
(4)立替経費精算を行い、101万円を回収する

会社側から見れば101万円のものに対して101万円の支払いなので何も
問題はないのですが、従業員側からすると立替経費が発生しない人と
発生する人との間で不公平が発生することを懸念しています。

また、仮に個人的に貯めていたポイントを支払いに充当した場合においても、
そのポイントが現金化される訳ですから不公平感の種になり得ます。
(個人的には何かの期間限定ポイントが現金化できたらだいぶ嬉しい...)

なお、この不公平感を無くすための手段として、立替経費精算で得た
ポイントを付与されたタイミングで値引きとして考えることもできますが、
実務上煩雑ですし、何より従業員側の不満が出てくると思います。

その結果、①のルール(受け取るポイントは無いもの)の適用となります。

それでも、「立替経費精算が多い人はポイントいっぱいでずるい!」みたいな
考え方をする人はいるかもしれませんが、もはや勝手についてしまうことも
多々ある状況で、「ポイントがつく経費精算は認めません!」とはできません。

②も完全なものではなく、例えばポイントを電子マネーに変えてから決済、
とかなるとレシートからは読み取れません。
そもそも、領収書にされてしまうとポイントで支払っていても見えません。

電子マネー禁止!」「領収書NG!必ずレシート!」なんて運用もできず、
妥協の産物のルールだったりもします。

とはいえ、同じ経理内で人によって見解が異なるのはよろしくないため、
私たちはこういう考え方でやってます、という整理はした方がいいはず。

会計でも税務でも何でもいいので、何らかの基準の登場を心待ちにしています。